春燈賞は昭和47年度から設けられた春燈における最高の結社賞であり、燈下集作家を除く春燈作家の中より、年間で最も顕著な作品活動を行った作者に与えられる賞です。
主宰の委嘱を受けた選考委員の推薦結果に基づき、主宰が決定します。
第52回(令和5年)春燈賞
西村 洋平
春燈賞(抄)25句 自選
日記買ふ妻は迷はず五年物
人影の集ふ社務所や世継榾
裏返し海鼠のいのち確かむる
じぶじぶと鎖を伝ふ春の雨
春昼や貝の口開く間の長き
若鮎の光となりて堰越ゆる
啓蟄や河馬の小耳のよく動く
足裏に探る日向や春寒し
天と地の間にしだれ桜かな
壺焼や鳥の形の醤油さし
植木市実のなる木には実の写真
傷つける柱もなくて子どもの日
井戸水を木桶に受けて夏蕨
うまそうな話など無し豌豆むく
輪唱の水輪を拡げ水馬
筆塚にくゆる線香五月闇
廃校のながき廊下やきりぎりす
開墾碑の彫り深々と赤蜻蛉
八の字の眉毛豊かに敬老日
山車の子の太鼓に応へ父の笛
秋冷の水音著き和紙の里
足元を掃除ロボット冬の旅
逆光に小岩とまがふ鴨の陣
熱燗やくもり眼鏡を頭に上げて
黒檀の机真中に冬座敷