春星賞は、平成11年より設けられた春燈俳句会の新人賞です。燈下集作家と既受賞者を除く、入会3年以上の春燈会員のコンクール形式による成果発表の場です。
応募作品は未発表作品20句とし、主宰の委嘱を受けた選考委員により、全応募作品の選考を行います。
第25回(令和5年)春星賞
川井 真理子
古都逍遥
花過ぎの母子の旅や空悠々
四方にうぐいす五重塔の白き壁
若みどり小旗をかかげバスガイド
東塔へかよふ薄雲春惜しむ
落慶のゆかしき楽舞風光る
をちこちの春田に日々のくらしかな
大鳥居くぐりてひらく春日傘
藤ゆれて吊灯籠の数しれず
春驟雨回廊の朱美しきかな
迷ひ子にひろき社や春落葉
わらび餅せせらぎに耳すすぎけり
水瓶をさげし観音うららけし
せんべいに辞儀をおぼゆる春の鹿
南大門見上ぐる母や鳥雲に
校倉のしかと組まれてあたたかし
蝶生れて無著の像のかた笑みぬ
春陰の阿修羅に瑕疵なかりけり
春ゆふべ如来の胸の匂ひやか
願掛けのをとこのやがて朧かな
春の灯の母子の旅にまたたきぬ