第48回(令和1年)春燈賞 近藤 真啓

春燈賞(抄)25句 自選

畢生の一番勝負独楽回す
靴底に土の弾力雨水かな
風光るへうたん池に鯉の髭
草餅やずしりと重き小銭入
交々の道へ影引き卒業子
花冷えや研究室の時計磨く
木洩れ日に輝くティアラ五月来る
エジソンを越ゆる発想夏つばめ
雨の日の噴水高くあがりけり
金糸梅雨さへ心地良き一日
ここよりは未踏の世界夕蛍
風鈴に山河の記憶ひとつ鳴る
夕虹を人待つひとと眺めをり
片木盛りの蕎麦のさざ波冷し酒
一言を胸に留め置き遠花火
白桃に委ぬる時の流れかな
小鳥来や句集の赤き栞紐
鉄棒に一日の余熱秋夕焼
ふはと立つ藁のかをりやあかとんぼ
定まらぬ結語を如何にラ・フランス
小春日や海岸沿ひの膝栗毛
うつそみの恋は盲目冬薔薇
二人抜け四人加はる焚火かな
卓囲むひとりひとりの手に蜜柑
煩悩の音の幾重や年果つる