第23回(令和3年)春星賞 辻 泰子

梅雨晴間

羅の影濃く立ちぬ段葛
源氏池白旗のごと蓮咲きぬ
コロナ禍や蓮の蕾の合掌す
青鷺の賢者のごとき佇まひ
波音のかすかに聞こゆる茅の輪かな
神官につづき茅の輪をくぐりけり
青嵐百の赤絵馬鳴かせたり
参道を真つ直ぐ妊婦の夏帽子
かはせみや写真家集ふ日曜日
忘れ物取りに走るや炎天下
八百年の寺の山門雲の峰
開山の日蓮像の灼くるかな
比企一族の墓へ日傘をたたみけり
一族の墓傾かせほととぎす
雑音は聞きたくなしと曼陀羅華
梅雨晴間江の島までと言ふも旅
白南風や極彩色の弁天堂
夕立や巡回ポリスと雨宿り
呼込みの土産屋通り凌霄花
江の島の土産話に海月かな