
春燈賞(抄)25句 鈴木榮子選
浅草にむかし清水屋菊供養
雲連れて十一月の旅かばん
二代目の庭師も寡黙石蕗の花
浅漬や灯の入りたる日本橋
冬銀河彼の世に入を殖やしけり
かつしかの空よく晴れし冬雲雀
あつけなく風花やんでしまひけり
淡き日を恃むて峡の冬桜
江戸開府四百年の桜かな
戦没の従兄弟が一人夕桜
仇討のなき世摺鉢山おぼろ
雀の子公園デビュー済ませけり
寄居虫のこつんとしじま破りけり
小でまりや天神下の惣二階
茶の間の会ありし頃はも傘雨の忌
噺家に俳人多し夏の月
竹伐の近江丹波と競ひけり
羅の膝の薄さよ香を聞く
八月や山に躓くちぎれ雲
飴色の江戸の和竿や鯊の潮
鰡とぶや江戸の名残りの柳橋
新涼や江戸手拭の招き猫
触れてみし子規の机の秋思かな
雀来て椋の実降らす浄閑寺
母方に俳人ひとり翁の忌