
春燈賞(抄)25句 自選
初春の帯締め固く結びけり
参道の百の菰樽淑気満つ
受けてすぐ破魔矢の鈴を鳴らしけり
残業のビルや余寒の灯をともす
検診を終へて二月の風に入る
白魚の双手に透くるいのちかな
順番に抱かるる稚や雛祭
切株の年輪著き春の雨
咲き満つる桜に雨の募りけり
捨てられぬ行李一つや更衣
さざ波の立ちては消ゆる代田かな
五月田や振返り見る越の山
昼月のうするる空や桐の花
声かけて路地に水打つ佃島
夜顔の闇深めゆく白さかな
かろやかに新涼の米とぎにけり
秋澄むや秘仏に結ぶ五色紐
朝顔の藍の深さよ母の忌来
亡き人に良きこと告ぐる星月夜
指笛に牛立ち上がる花野かな
小流れの石に息づく秋の蝶
路地に聞く佃囃子や夕月夜
茶羽織の丸縁眼鏡母恋し
地下道の矢印ばかりそぞろ寒
会へばすぐ里の言葉やのつぺ汁