第22回(令和2年)春星賞 しのざき智子

菩提樹

菩提樹の陰に昼寝の一家族
片蔭の牛乳売りや牛連れて
子等の声囲む屋台や揚げバナナ
熱風も塵も舞ひ込むリクシャかな
水瓶を降ろす黒髪夏の露
黒髪の白いリボンや扇風機
手彫り職人親子三代汗光る
サフランライス自慢の店や街炎暑
人も荷物も犇き合へる溽暑かな
雨水の恵みを溜めて行水す
チャイ運ぶ子のサンダルや夏落葉
日盛や城へと向かふ象の列
灼熱の駱駝ゆらりと向きを変へ
機織の音さまざまに玉の汗
糸巻き車止めて夕焼仰ぎけり
停電の屋外食堂夏の月
藁縄を編みしベッドや蚊遣香
花嫁の笑みも涙も喜雨の中
織り上がる藍の絣や秋近し
白檀を彫りし手箱や星月夜