第2回(平成12年)春星賞 木多 芙美子

花散るや

花散るや魚板へりたる翁堂
芭蕉玉解き押せど開かぬ花頭窓
むらさきに石の石山春しぐれ
恋の声こぼすや雨の夕雲雀
春の鳰波のまにまに夢つむぐ
波音や翁をしのぶ月おぼろ
余呉惜春万葉人のわすれもの
佐保姫に山の湖たひらなり
山風はみどりの色やわらび餅
湖遅春山影ふかく沈めけり
さくらさくら吹き上ぐ風も奥比叡
花影やくわんのんさまのおんまなこ
花明りくわんのんさまのたなごころ
念づるは生生世世や落椿
しあはせのうぐひす谷を渡りけり
風光る棚田は水の交響詩
接岸も離岸も自在花筏
なに思へとや哲学の道飛花落花
春の月自照のこころ失せやすし
心おきなく散るがよろしや山桜