薄ごろも
駿河路の潮風手繰る茶摘みかな
茶作りの十指に絡む香なりけり
揉み上げし針千本の新茶かな
一滴も残さず新茶汲み分けり
「遠山」の灰型風炉の景色かな
衣擦れの音の立ち居や夏点前
羅の袖に纏はる露地の風
透かし見る心の襞や薄ごろも
芭蕉布の風に島唄聞こえけり
谷川の音集めけり蕗の雨
繋ぐ飛騨の匠や祭笛
宵宮や囃子のうねり神の杜
祭笛からくり人形翁舞ふ
樽御輿子ら殿の花道に
薪能経文称ふ声揺らぐ
弱法師の心眼照らす薪能
新盆の門に瞬く白提灯
精霊棚夫の好物満載に
棚経の木魚浄土のたよりかな
送り火や名残の煙掌中に