草矢
白南風や紆余曲折の川の照り
草矢射る浄土の夫の胸元に
貝風鈴水の碧さを恋ひにけり
灯涼し遺品の竿の手ずれかな
七たびの迎火恙なく焚けし
ついと来てついと消えたり夕あきつ
かなかなや見慣れし山の影深む
晩年を添ひし山荘薄紅葉
余命告げず看取りし日々や虎落笛
抗へぬ訣れの記憶霜の花
ひたむきに尽ししことも冬の星
光陰の妙薬なるや冬至風呂
去年今年七色まじる砂時計
初鏡たつぷり刻をかけにけり
小豆粥ふつふつ命愛しまねば
しろがねの辛夷のつぼみ天を指す
残る鴨いとしむ羽をたたみけり
過ごしし日確とこころに垣繕ふ
歩みきし夫との径やかげろへり
ときめきに齢のあらず初ざくら