第7回(平成17年)春星賞 吉田 かずや

日雀鳴く

雪の夜は梁哭けり地震の村
屋根の上に屋号呼び合ひ雪卸し
番頭で終りし父のインバネス
雪国はなべて味濃し煮ころがし
面売りに出前のとどく一の午
日の当たる前列に置く受験絵馬
樺咲くや一茶の里の道祖神
西へ玄奘東ヘポーロ蜃気楼
野遊びの箸を使はぬ昼餉かな
花冷や天鵞絨椅子のすり切れて
納屋の戸は蹴らねば開かず菜種梅雨
鯉のぼり隣の空を借りにけり
粽解く紐にからむや国訛
年金暮らしの贅とも鯵を叩きけり
花舗の灯の消えて梅雨寒俄なる
読み止しの本の耳折る蛍かな
帽子屋の大きな鏡梅雨明くる
炎天の塩噴いてゐる野球帽
汗のシャツ替へてひと日を折り返す
鍵かけぬ里の習はし日雀鳴く