京に帰れば
花ゆすら京に帰れば京ことば
からたちの花垣越しや尼のこゑ
光悦寺垣映れる春の障子かな
坪庭の風雛の間を通りけり
抜路地の橋板ひびく遅日かな
揚雲雀鳴きづめ大き雲の中
やや屈み日永の羅漢あくび噛む
大極殿址の夕づく落花かな
割炮烙厄を遥かへ壬生念仏
壬生の鉦路地の日暮を早めけり
納念仏夕闇ほのと余花浮かす
空にけぶる東寺の塔や夏霞
初蝉や黒谷の径鳴きわたる
浮雲のうへに浮雲夏ひばり
邪鬼の目の宙へみひらく薄暑かな
白蓮に朝の力の漲れり
麻のれん奥に奥ある町屋かな
遣水の草の香通ふ夏座敷
御所人形の頬の円みを賀茂なすび
絵すだれの風やはらかし京都御所