第14回(平成24年)春星賞 小島 昭夫

淡海

比良八荒霊松確とたぢろがず
最澄の往還の径すみれ咲く
北嶺や受難に耐へし巨樹芽吹く
あはあはと明けゆく湖や諸子舟
千年の御堂にひびく初音かな
藩主なき城をとりまく桜かな
花吹雪わづか五年の都跡
鎮魂の湖へ夕鐘春おちば
夏来る三鬼の一句おそるべし
石積みの技継ぐ裔や虹二重
漕ぎ出づる六月の湖藍ふかし
白き歯の男ヨットの帆を揚ぐや
ふたりして跣足になりぬ汀かな
ビール酌むいつしか歌ふ周航歌
いにしへの息吹を頬に大夕焼
短夜の夢かうつつか浮御堂
こそばゆき天道虫を弾きけり
光源氏の生れし伽藍やほととぎす
悠久の青嶺に沈む夕日かな
葭切を啼かせて淡海暮れにけり