第11回(平成21年)春星賞 矢口 笑子

スナップショット

ビル街に蝉の一声雨上がる
交番の英語マップや百日紅
蝸牛枝移りの角伸ばしけり
振り向いて構へし斧や子蟷螂
天道虫背負ひし星の軽からず
壊してはまた建つビルや日雷
さりげなく踏んばつてをり水馬
日盛りや鴉の狙ふ猫の餌
駅前の監視カメラやサングラス
鬱の字の混み合つてゐる暑さかな
愚痴言ひにアイスクリーム提げて来し
その後の話長引く扇風機
夕焼や送りがてらの小買物
マネキンの笑ひ疲れし夏の果
四次元の入口覗く熱帯魚
激辛カレー一ト日の汗を拭ひけり
ががんぼや火曜の夜のサスペンス
気掛りのひとつふたつや浮いて来い
灯に寄るは人恋ふに似て夜の秋
火蛾打つて今日の憂ひは持ち越さず