倭寇の裔
船腹を打つ波音や寒明くる
水道の潮逆巻ける旧正月
冴返る波散る岩のわさび色
帆を濡らす雨水の雨となりにけり
梅東風と港の衆の口々に
船の影入江にゆがみ鳥曇
海鳥の舳先に止まり三鬼の忌
霾や吾は倭寇の裔にして
かげろふや親しきものにそぞろ神
春潮と色競ひけり阿波の藍
巻藁に遍路お鶴の木偶頭ラ
菜の花のかなた灯台突つ立てり
船窓を打つ波の穂や昼寝覚
箱眼鏡黄泉の入口のぞきけり
隠れ江に人の顔負ひ平家蟹
甲板の日除に覗く臑二本
水軍の将のごとくに革蒲団
ゆふづつや舟の形の吊忍
磯の香のかよへる閨や伊予すだれ
黒南風や港にありし遊女宿