今月の句

今月の先師の句

安住 敦

   美貌なる鱵の吻は怖るべし
   机拭いてあと幾春を凭るとせむ

今月の主宰の句

宮崎 洋(みやざき・ひろし)

信号の街を飾れる聖夜かな
花八手われに片恋いまふたつ
読み出せば燃やせなくなる焚火かな
あと五分が蒲団の中の詩の世界
初空の国や真砂女の丙午

春燈誌 令和8年3月号より

今月の注目句

宮崎 洋選

     燈下集より
振り向いて見ても枯野にしかずけり 松橋 利雄
探梅や鼻先風を切りさいて小張 志げ
滝凍てて神代の黙を抱きけり岩永 はるみ
首回し鴉の覗く暮の街後藤 眞由美
クリスマス満艦飾のホールかな河本 由紀子
室咲や受け継ぐ者の無き調度横山 さくら
何となく唯何となく年の暮後藤 大
ストーブの芯上げ話し促せり大槻 祐二
寒柝の対岸の灯へ強く打ち阿知波 公子
うらおもてなんてしよつちゆう去年今年川井 真理子
   当月集・春燈の句より
転院の夫と車窓のクリスマス内田 聰子

        
春燈誌 令和8年3月号より

当月集の巻頭作品

佐藤 享子 (さとう みちこ)

頷くも言葉のひとつ着ぶくれて
風花のやうな別れでありしかな
浄土より遙けき旅路虎落笛
橋の名は旧仮名遣ひ都鳥
繭玉や座敷童は赤が好き

春燈誌 令和8年3月号より

今月の推奨句〜当月集・春燈の句(1月号より)

三代川玲子選

流木に坐して月待つ九十九里古谷 昌女
芒原その先は未来なのですか 畠中 圭子
松茸の薄さ見せ合ふ幕の内羽吹 孝子
廃線の噂三たびや曼珠沙華中野 浚次
角打ちの新酒の甘し検診後津澤 祥
口曲げてあくびの赤児木槿咲く竹内 美麗
白杖の人木犀に立ち止まる三宅 妙子
凪のやうな便りが舞ひ込みぬ高原 みどり
秋茜路地の茶房は不定休高  すみれ
風渡る百間廊下こぼれ萩指方 明惠
つつがなく九十になる菊なます前澤 喜久江
外苑の銀杏よけて塾帰り新谷 喬
大豆引く一日動きづくめかな束原 節子
七五三ぢぢばば四人うち揃ひ宮前 和子
団栗を拾はぬ歳となりにけり𠮷岡 るみ子
肌寒や手鏡回し湿布貼る清水 まり
お茶貫ひ正史の話聞いて秋藤原 典子
酒まつり新酒の試飲ほどほどに高柿 多美子
ほどほどの距離の淋しさ吾亦紅福島 善子
秋茄子や嫁に食はせと荷造りす羽原 順子
お月さま付いて来るよとあどけなや齋藤 泰子
チョロチョロと川の底なり水澄めり渕上 慶子
秋澄むや湖のほつれの瀬田の川上田 宏明
玄関にどさり届くや今年米西坂 光雄 
秋場所や贔屓力士の両ゑくぼ内海 茂子
おみ漬を楽しむ明日の穂紫蘇摘む齋藤 久子
末枯に触れたる指の白さかな李  哲宇

春燈誌 令和8年3月号より