山の辺の道
ひもろぎの斑雪まばゆき古跡かな
春水や光の粒の遊びそむ
エチュードは君のフルート春淡し
恋知りし山の辺の道草萌えて
陵の天上めざし初雲雀
灯ともれば別るる習ひ半仙戯
不揃ひな石の階段落椿
人麻呂の歌碑淡雪に潤ひぬ
夕がすみ畝傍山も香具山も影あはく
旅立ちに餞のごと春時雨
嫁せし日の父の面差しすみれ草
げんげ田や「まほろば線」にゆれ揺られ
三輪山を千古の風や鳥帰る
蛇出て味酒に頰染めつべし
せせらぎに芹摘みてをり女どち
母子草蕾に母の眠れるか
日の射せば唄ひ始めん葱坊主
やまびこのかすかに渡る花の昼
黄蝶舞ふ無人の野菜販売所
たたなづく青垣を染め春夕焼
