第17回(平成27年)春星賞佳作 近藤 真啓 2024.10.14 神の手 元日や湯を沸かしゐる当直医混み合へるいびき外来日脚伸ぶ大学のロゴ入り義歯や春闌嚙んでみせ笑つてみせて麗けし青帝や透明帯を溶く精子仮説また閃く朝や揚雲雀窓若葉チョークの音の軽やかに講義終へて白衣の袖に拭ふ汗黴の香や原著に悟る進化論論文の山を枕に三尺寝西日射す廃液室のガロン瓶天秤の揺れの止まらじ敗戦忌吸口に群るるマウスや水の秋露けしや腹腔に打つ麻酔薬薄切脳筆もて掬う夜長かなまだ解けぬ神の法則九月尽献体の軽き棺やしづり雪黙禱に鋸のひと引き冬ざるる人魂なほ骸に纏はる寒さかな背信の指にて割るや寒卵