第38回(平成21年)春燈賞 竹内 慶子

春燈賞(抄)25句 自選

初凪や総の山なみたひらけき
白帆ゆく海煌めけり初電車
朝粥や海開けたる冬座敷
青空に触るるばかりのミモザかな
のんちやんはどの雲に乗る春の空
うまごやし食む馬の背に日照雨
あたたかや亀岩草を食みてをり
望郷の真砂女の句碑や草青む
眉太き大使夫人や白扇
葬列の去つたる道や朴の花
沙羅一花山家の門をともしけり
夕顔の実のすがほ見す道の駅
峡の駅忘れずに来る夏燕
綿シャツの肌になじみて今朝の秋
新涼の投網きれいに畳みけり
鍋底を磨き上げたる厄日かな
月光のまつすぐに差す湖心かな
待宵や楽人湖へ漕ぎ出しぬ
チェロの音の耳朶に残りし良夜かな
秋の川光の粒の揺れ止まず  
櫨紅葉南蛮渡来のほとけかな
猫の目のやさしくなりて山眠る
本郷に父祖の縁や黄落期
赤坂や工事囲ひに聖樹の画
青空に発射しさうな冬芽かな