
春燈賞(抄)25句 自選
千年の恋を取り合ふ歌留多かな
待春の百戸の谿を訪ねけり
子規庵の芽吹き待たるる六畳間
棒道を信濃へ急ぐ春の雲
流し雛相寄りて瀬に消えにけり
風光る石の井桁の自噴水
天主つらぬく通し柱や春の月
行く春や寺歴を秘むる高野槙
白牡丹闇を揺らして崩れけり
笹百合やかな書き美しき土佐日記
城門に仕掛あまたや女郎蜘蛛
夏蝶や音なく昼を揺らし来る
女人高野石楠花色を深めけり
篝火や慈愛に満ちし鵜匠の目
相伝の木地師の鑿や菊日和
鬼やんま銀やんま欲し兄が欲し
蓮の実の飛び出す間合はかりけり
しんがりはいつもしんがり雁の棹
切絵めく京の街並十三夜
残菊や角の欠けたる巴塚
翁堂の藁屋根伝ふしぐれかな
罅走る翁の墓碑や石蕗の花
冬桜三井晩鐘の音澄めり
一葉の遺品小ぶりや冬至梅
風花や師の句碑に会ふさざえ堂