第42回(平成25年)春燈賞 小山 繁子

春燈賞(抄)25句 自選

繭玉のゆれを離さぬ太柱
還暦の立志やさらに初不動
音高くゆたかに郷の雪解川
芽柳の薄暮ゆれつぐ川面かな
春日傘身をあましゆく通い路
山笑ふ郷に光と人の声
こころして父想ふ日の新茶かな
夏を呼ぶ髪なびかせて佇つホーム
ポストまで梅雨の湿りの文をもて
回廊は風の抜け道梅雨の蝶
格付けと無縁のくらし燕の子
羅にときめく日々のすでに過去
ラムネ飲む忘れたきこと忘れむと
短夜や消灯までのもの想ひ
島の影島に重ぬる晩夏かな
新涼や漁師訛の魚市場
秋澄むや猫も耳かす遠汽笛
赤い靴履いて誰待つ桐は実に
海境へ秋日曳きゆく貨物船
畳なはる波のさきざき秋夕焼
恙なく一ト日の芙蓉閉ぢにけり
まなざしの羅漢父似や石蕗明り
あやとりのむかしにもどる五指十指
みちのくの残りし冬の紅葉かな
瞬かず野末の黙の枯木星