今月の句

今月の先師の句

成瀬 櫻桃子

   枯野に日あまねき時を愉しめり
   初春や恋にもありし千日手

今月の主宰の句

宮崎 洋(みやざき・ひろし)

訃音あり輝きいよよ二十日月
蚯蚓鳴く医者の余命のいい加減
鳴く歌女に地球の危機を問ひ質ず
すぐ胸のきゅんとなる君秋の声
秋声や原稿用紙走るブルー

春燈誌 令和8年1月号より

今月の注目句

宮崎 洋選

     燈下集より
綿虫や今日を支ふる自力の歩卜部 黎子
どんぐりのころころ二つひとつ美し木多 芙美子
超高層より街の終止を俯瞰せり平野 加代子
長き夜の勉学の灯や未だ消えず田嶋 洋子
訃報聞く暫しの黙に鵙高音豊谷 青峰
身に入むや線一本で消す名前小山 繁子
ナプキンの折目を正す神の留守木村 梨花
萩刈るや身辺整理すすまざる溝越 教子
行く秋や喪服の並ぶ一両車荒井 ハルエ
色なき風とほし明日より母の部屋大平 さゆり
 
   当月集・春燈の句より
金秋や産卵の鶏まぶた閉づ大濱 たい子

        

春燈誌 令和8年1月号より

当月集の巻頭作品

佐藤 享子 (さとう みちこ)

路地奥に菊を咲かせて人嫌ひ
枝折戸の開くたび雫る月の萩
尼寺に去り状の束こぼれ萩
水音も仏の声や秋遍路
木隠れに魑魅も出て来よ月今宵

春燈誌 令和8年1月号より

今月の推奨句〜当月集・春燈の句(11月号より)

三代川玲子選

草の穂や役目終へたる三輪車林  美穂
夕まぐれ鹿の草食む音かすか田口 久美子
クロールを十五メートル休暇果つ河田 水尾
老い二人の暮し冬瓜転がつて安達 孝子
ばらばらに野菜の育つ残暑かな狩野 好子
梨をむく恙消えゆくやうに剝く鈴木 周子
鼻につく土の匂や夕立来る垣内 貴子
灯を消して窓の明かりの良夜かな薮野 ひとみ
秋薔薇の咲くや廃れし遊園地西村 香苗
ラッセラーラッセラー佞武多率いて跳ぬる子ら野瀨 博興
湯上がりの祖母美しや月あかり栗原 節子
へのへのもへじ自嘲してゐる案山子かな伊藤 洋明
かすかにも秋めく気配潮の色天野  洋
秋の朝空一掃のほうき雲篠澤 テイ
野良猫のまるまるねまる終戦日齊藤 記子
夕凪の漁港に低き演歌かな鈴木 朋子
鰻食ぶ免許返納記念日に胡本 彩女
万物の霊を鎮めて蚯蚓鳴く小崎 みちよ
薄明のオクラの花の月のいろ船井 ゆず
バスタオル夏の日差しをたたみけり前澤 喜久江
健やかに親族集ひ西瓜かな関  道子
四智賛を恩師に捧ぐ施餓鬼かな大島 光草
新盆や所狭しの黒き靴坂  由雄
ふんはりと夕日のせたる花すすき森  ふく 
夏の川烏は羽を洗ひをり菊池 美路
現世にいくさは果てず葦茂る高橋 由枝
爺の吊る井戸の西瓜や引き上ぐる勝川 恵理子
お日様もよく頑張るよ秋暑し谷山 昭子
我が庭に迷ひ子のごと百合二本荒木 仙久

春燈誌 令和8年1月号より